– 長年のクセが、あなたの腰を壊す仕組みとは?
「ああ、腰が痛い…もう歳かな」
中腰での作業の後、朝ベッドから起き上がるとき、ふとした瞬間に走る腰の痛み。
40代・50代と年齢を重ねる中で、腰痛を「加齢による当然の結果」として、半ば諦めてしまっていませんか?
しかし、それは本当に“歳のせい”なのでしょうか?
◆「腰痛=老化現象」…本当にそうなのか?
厚生労働省の調査では、腰痛は男性の自覚症状で1位、女性でも肩こりに次いで2位と、まさに「国民病」。
多くの人が悩んでいるがゆえに、「みんなそうだし、自分も仕方ない」と思ってしまいがちです。
けれども、もしその腰痛の9割が“加齢”ではなく、“習慣”の積み重ねによって引き起こされたものだとしたら?
今回は、その可能性に迫ります。
◆“椎間板のすり減り”だけでは説明できない
一般的には、腰痛は「椎間板の水分が減ってクッション性が低下した結果」と言われます。
確かに一面の真実ではありますが、それだけで説明できるでしょうか?
同じ80歳でも、背筋が伸びてシャキシャキ歩く人と、杖なしでは歩けない人がいます。
この違いは、何十年にも及ぶ「身体の使い方」の差にあるのです。
Vol.2で紹介した“仙骨座り”を思い出してください。
骨盤を後ろに倒して腰を丸めた姿勢が、椎間板の前方にだけ圧力をかけ続け、後方には引き裂くようなストレスを与える。
これはまるで、同じ方向に何度も何度も消しゴムを曲げ続けるようなもの。
最初は弾力で戻れても、やがては傷つき、ちぎれてしまいます。
つまり——
あなたの腰痛は、“すり減った”のではなく、“壊れていった”のかもしれないのです。
◆真犯人は「腰」ではない——身体のサビと歪み
腰痛のもう一つの大きな原因は、筋肉や筋膜の柔軟性の低下です。
特に、
- お尻の筋肉(臀筋群)
- 太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)
これらが硬くなると、股関節の動きが制限され、本来は股関節で行うべき動作を、腰が代償して行おうとします。
この「代償運動」が積み重なると、腰に過度な負担がかかり、痛みとなって現れます。
例えるなら、ドアの蝶番が錆びて動かなくなった状態で、無理やりドアを開け閉めしているようなもの。
腰は“痛みを感じている場所”であって、“原因の場所”ではないことが多いのです。
【まとめ】
あなたの長年の腰痛は、避けられない老化現象ではなく、「身体への偏った負荷」や「動きのクセ」という、明確な原因に裏付けられたものかもしれません。
そして、原因があるということは、改善できる可能性があるということです。
諦めるのは、まだ早い。
そしてその身体への偏りは、実は「呼吸」にも影響しています。
次回は第1部の最終回として、「なぜ現代人の呼吸は浅くなったのか」というテーマを深掘りします。
📌Q&Aコーナー:よくある“腰痛の誤解”に答えます
Q1. 腰痛は年を取れば誰でもなるものでは?
→ 必ずしもそうではありません。同じ年齢でも腰痛がある人とない人がいることからもわかるように、「身体の使い方」や「筋肉の柔軟性」が大きく影響します。
Q2. 「椎間板のすり減り」が原因なら、治らないのでは?
→ すり減りが原因の一部であっても、姿勢や動作を見直すことで進行を防ぎ、痛みを軽減することは可能です。
Q3. 腰が痛いのに、原因が“腰ではない”って本当?
→ はい。多くの場合、お尻や太もも裏、股関節の硬さなどが腰に代償運動をさせ、痛みとして現れています。
「腰=原因」と決めつけないことが大切です。